家庭の医学

「遺伝子検査」は手の届く時代へ

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子宮頸ガン

概説

 子宮はなすびのような、あるいはヒトの頭のような形をしています。解剖学的に子宮の首の部分を「子宮頸部」といい、頭の部分を「子宮体部」と呼びます。またガンの発生部位が前者の場合は「子宮頸ガン」、後者の場合は「子宮体ガン」とに分けられます。
 子宮に発生するガンを総称して「子宮ガン」と呼ぶ習慣が日本にはあります。しかし、混乱を招くため「子宮ガン」という言葉は使用すべきではないでしょう。そもそも子宮頸ガンと子宮体ガンは、子宮という同じ臓器に発生しながらも、まったく異なるガンだからです。発生原因、年齢、ガンの性質(生物学的行動)も異なります。また治療法も手術術式が異なり、抗ガン剤、放射線療法への反応も大きく異なります。
 「子宮ガン検診」というと、子宮頸ガンの検診なのか子宮体ガンの検診なのか、あるいは両方なのか理解できません。通常、子宮ガン検診というと、「子宮頸ガン」の検診を意味します。現時点で検診の受診者の年齢層は、施設によっては更年期以降の女性が多くを占める場合もあります。その場合、子宮頸ガンの検診のみではまったく配慮が欠けているといえるでしょう。今後、啓発が必要です。
 さて、子宮頸部は、外側から皮膚・外陰・膣と連続性に、扁平細胞で構成されています。そして、子宮の入口を少し入ったところで、子宮頸部(頸管)のを構成する腺細胞とぶつかり合うところがあります。この部位の未熟な細胞が異常に増えていく状態が、子宮頸ガンです。組織型には、もとの扁平が異常増殖する「扁平ガン」と頸部の腺細胞が増殖する「腺ガン」があり、8対2の割合です。後者のほうが、は不良です。
 明確なことは、セックスの経験のない子宮頸ガン患者はこれまで一人もいないということです。したがって、性行為による何らかの感染が子宮頸ガンのきっかけになることは間違いありません。最近その原因がHPV(human papilloma virus:ヒトパピローマウイルス)というイボをつくるの感染であることが明らかになりました。
 子宮頸部の正常細胞にHPVが感染した状態の細胞を異型細胞と呼びます。異型細胞の集合体を異形成といいます。異形成は、段階的に軽度、中等度、高度と分類されます。米国では、異形成と内ガンを合わせて子宮頸部内新生物(Cervical Intra-epithelial neoplasia: CIN)として、CIN I(軽度異形成に相当)、CIN II(中等度異形成)、CIN III(高度異形成、および内ガン)の3段階に分類し、高度異形成と内ガンは同じ疾患として取り扱うことになっています。HPVに感染した異形成がすべてガン化するわけではありません。異形成がガン化する確率はせいぜい5~10%と推定されます。HPVには100種類以上のタイプ(番号で分類されている)があり、ガン化するものとしないものに2分されます。
 例えば、6、11、53、54、70番はガン化する可能性はほとんどありません。これらのHPVをローリスク(low risk)HPV と呼びます。一方、16、18、31、33、39、51、52、58、82番などはガン化の確率が高いです(〈high risk〉HPV)。HPVのタイプを調べる(HPVのタイピング)と、「未知の型」と判定される場合があります。これは、今までに知られていない型か、既知の型の変異型か、いずれかです。HPVとガン種との関係はすでに調査し終えていますから、今までに知られていない型であると、ガン化の可能性は低いと考えられます。
 一方、既知の型の変異型であると、ガン化の可能性は不明といわざるをえません。概略、未知の型のガン化の確率は10%以下と考えてよいでしょう。HPVが感染した異形成であっても、HPVの感染だけではガン化しません。ガン化するにはHPV 感染のほかに、もう1つ以上のへの刺激)が必要です。
 最も危険なは喫煙です。その他いわゆる体全体で感じる「ストレス」も二次刺激となりえます。HPV 感染により、正常から異形成になるのに、6カ月から数年、異形成からガン細胞になるのにも、数カ月から数年かかります。
 したがって、たとえ性行為によりHPV が感染しても、6カ月ごとにガンに詳しい医師による検診を受けていれば、ガンの前の状態(異形成)でみつかり、その後の管理により心配するようなガンにはなりません。極論すると、全女性が6カ月ごとに信頼できる施設でガン検診を受ければ、子宮頸ガンで死亡する女性はほとんどいなくなります。

症状

 0~Ia期は、目にみえないガンであるため、無症状です。
 Ib1期から、性交後の出血、おりものの増量、不正出血などの症状が現れてきます。とにかく性器からの、おりもの・出血につきます。
 III期からは不正出血に加え、腰痛、背部痛が出現する場合もあります。

表:臨床進行期分類

診断

 ガンと診断された患者さんの平均年齢を出す意味はほとんどありません。子宮頸ガンは性行為によるHPV感染が原因(性病)ですから、基本的に若い女性の病気なのです。
 最近、初体験の年齢が低下し、そのセックスパートナーは人数、年齢、職業などの点で多様化しています。である子宮頸部異形成は低年齢化しています。それに伴い、子宮を摘出することなく治癒可能なCIN III(高度異形成および内ガン)患者は低年齢化しています。最近のCIN IIIの患者さんの大半は18~35歳です。40歳以降になると、異形成は減少します。
 性行為を経験したら、1年後からはガンを専門としている(ガンのことを理解している)医師による子宮頸ガン検診を受ければ何も心配ないでしょう。検査の間隔は性行為によりますが、妊娠、出産するまでは6カ月ごと、妊娠不要の女性では1年に一度検査を受けるよう勧めています。

1)子宮ガン検診の落とし穴
[1]行政指導型の「子宮ガン検診」には「子宮体ガン」の検診が含まれていない
 婦人科系の主なガンは、子宮頸ガン、子宮体ガン、卵巣ガンです。しかしながら行政指導型の「子宮ガン検診」の大半は、子宮頸ガンのみを検査するという昔のままの形態で行われています。更年期以降(閉経含む)の女性では性病である子宮頸ガンの検診は多くの場合不要であり、子宮体ガンの検診こそ必要です。また、若い女性でも月経が不規則な場合、子宮体ガン検診は必要です。子宮体ガン検診は2006年現在、オプションでも禁止されている地域(東京都内)があるのには驚かされます。

[2]経腟超音波の重要性
 出産回数が少なく、低用量ピルを服用しない日本女性では子宮内膜症と卵巣ガンの発生頻度が急増しています。卵巣にできる子宮内膜症(チョコレート)、卵巣ガン、卵管ガンは、ガンに詳しい婦人科医であれば経腟(けいちつ)超音波で診断可能です。しかしながら、行政指導型の「子宮ガン検診」には、経腟超音波が含まれていない場合が少なくありません。もはや経腟超音波抜きで婦人科診察はあり得ないといっても過言ではありません。

[3]正しい「婦人科検診」
 子宮頸ガンが性病であること、毎月月経があれば子宮体ガンにはならないこと(月経が不規則、あるいは閉経女性では常に子宮体ガンのリスクあり)、卵巣腫瘍(良性もガンも)は経腟超音波で診断可能であることなどから、自分の年齢、生活様式、月経の状態を考えて、子宮頸ガン、子宮体ガンのどちらが必要か判断して、また施設(医師)を選んで婦人科検診を受けて下さい。子宮体ガン検診と経腟超音波の技術は、医師により極端に差があります。

[4]人間ドック
 人間ドックは、必ずしもガンの検診ではないので注意して下さい。

2)分類の意味
 もともと扁平領域に発生するガンですから、ほとんど(80%)は扁平ガンです。残り20%は、腺ガンです。組織型の違いを問題にする理由は、ガンの性質が異なるからです。腺ガンは扁平ガンに比べ、[1]早期にリンパ節転移を生じる、[2]放射線照射がほとんど無効、[3]抗ガン剤は方法によっては有効だが、扁平ガンより効きにくい、[4]いわゆる内ガン(0期)の発見が困難、難しいなどの困った特徴をもっています。結果的に、同じ進行期でも腺ガンのほうがが不良です。
 を比較すると、扁平ガン(腺ガン)は、I期:90(80)%、II期:75(60)、III期:40(25)%、IV期:20(10)%以下、となっています。

3)進展様式(転移の仕方)
 扁平ガンも腺ガンも、血行性またはリンパ行性に転移します。血行性で転移する部位は、肺、脊椎が多く、そのほか肝臓、脾臓(ひぞう)にも転移しえます。リンパ行性は、骨盤のリンパ節から(そけい)部、傍、大静脈周囲、縦隔(じゅうかく)と順に上っていき、最後には左側の鎖骨付近のリンパ節(ウィルヒョウリンパ節)にまで達します。腺ガンは扁平ガンよりも早い時期に、リンパ節転移を生じます。

※文中にあるオレンジ色の文字にカーソルを合わせてクリックすると、用語の説明が表示されます。

(執筆者:清水敬生

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出典:「家庭のドクター 標準治療 最新版」(発行:日本医療企画 - 総監修:寺下医学事務所)/ 執筆者一覧


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