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パニック障害

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心療内科・精神科受診に際しての予備知識

 心療内科は主として「心身(しんしん)症」(体の症状を訴えているがそれが心理的な問題のために起こっていたり、治りにくくなっていること)の診断や治療を専門にする科です。患者さんは大なり小なり精神的・社会的問題を背景に抱えています。心療内科でしか治療できない独自の病気以外にも、いろいろな科にまたがる病気を広く扱うことが多く、現代のストレス社会において非常に注目されている科でもあります。
 正式に看板をかかげられる(標榜〈ひょうぼう〉科と呼びます)ようになってからまだ日が浅いため、心療内科という新しい診療科の概念を一般的に広く知っていただくために、心療内科の「受診のコツ」について解説します。
 医療というものは基本的に病める患者さんがいて、その患者さんのために何らかの援助をして、問題の解決方法を求めていくものといえます。そしてその援助や問題解決方法は、医学や生物科学における基礎的研究と、学や社会科学における経験の2つを科学的に評価し、一番よい、あるいはよりよい方法が選択されてきました。このように選択されたものをここでは「標準治療」という表現をしていると考えて下さい。さらにこの科学的によいと選択された方法もその結果についての比較検討による再評価がなされ、よりよいもののみが残されてきました。
 さて、医療は科学という万能感に満ち、なおかつ頼りになる方法によって輝かしい発展をとげてきました。しかし、医療を支えてきたもう2つのファクター(要因)があります。その1つは、情緒的、人間的なケアという言葉で表現されるものです。もう1つは、患者さんと治療者がどのような治療関係を形成していくかという問題です。
 そこで、心療内科が専門とするはストレスと密接な関係をもっています。人がストレスを受けたときの反応(これをストレス反応といいます)としては以下の3つの種類があります。その[1]は、頭痛や胃痛などの身体症状として表現されます。これが「」です。その[2]は、不安やうつなどのとして表現されます。これには不安神経症やうつ病などが含まれるでしょう。その[3]としては、アルコールやタバコの量が増加するなどの行動上の変化として現れます。初期のストレス反応としては身体症状として現れることが多いといわれていますが、ストレスが強いときや長くストレス状態が続くとや行動上の変化も生じてくると考えられています。
 ここで、東京大学医学部附属病院心療内科の外来を受診している患者さんのデータベースを調べてみると、約50%が、神経症と軽症うつが約20%ずつあり、この比率は開設以来ほぼ一定しています。
 典型的なとして、あるいはとしての要素を多くもつ病態として頭痛、過敏性腸、気管支喘息、、白衣高血圧、性心疾患、症、(かいよう)性大腸炎、(しょけい)、痙性斜頸(けいせいしゃけい)、摂食障害、パニック障害などがあげられます。そしてと神経症の区別については難しい点もありますが、基本的なことは、は身体症状の比重が大きいこと、特定の器官に症状が固定していること、機能的障害にとどまらずしばしば器質的障害を伴うこと、過剰が多いことなどがあげられます。
 一方、神経症はの比重が大きいこと、症状が多彩で、、移動しやすいこと、機能的障害にとどまること、不が多いことなどがあげられます。例としては、身体症状の比重の大きい心臓神経症はに近く、漠然とした不安というの比重の大きい不安神経症は神経症に含まれます。また、うつ病の中で、身体症状が前面に出て、うつ症状の軽いものはに近い病態として考えている治療者も存在しています。
 次に、広義のおよび全人的医療について少し触れておきます。この全人的医療とはまさに本来の医療の原点です。ここでアメリカのデータを引用させてもらいます。K.ホワイトという研究者の調べたもので、彼によると成人1,000人のうち1カ月間に(りかん)あるいは受傷する頻度は750人で、そのうち医療機関を受診するのは250人、さらに入院治療を必要とするのは9人であるといっています。また、大学病院などの専門病院へ紹介されるのは、たった1人であるとのことです。大学病院はこのたった1人の重症患者の治療のために、高度の先進医療を必要としているともいえます。
 一方、250人のプライマリケア医を受診する患者に対する医療も重要なことです。ここでは患者の心理・社会的要因を十分に考えながら、common disease(コモンディジーズ:一般的に多くみられる病気、例えば高血圧、糖尿病などで、これらを広義のと考えている)に対しては、科学的方法による適切な治療と人間性豊かなケアが求められています。そして興味深いことは、この250人の中で約40パーセントがか神経症、軽症うつという点です。
 なお、心療内科と精神科との関係は、前述のと神経症について触れたように、ストレスと身体症状に中心を置くのが「心療内科」で、「精神科」は系とに重点があり、統合失調症、気分障害、アルコール依存、発達障害などが対象となります。しかし、身体症状とは相互に影響し合うので、当然境界領域が存在することになるのです。 (久保木富房)

心療内科・精神科で使用する薬について

 心療内科や精神科では他の科と異なり、体ではなく心の部分に作用する薬剤を主に使用します。基本的に安全性の高い薬が多いですが、特殊な副作用を起こすこともあり注意が必要です。比較的処方される頻度の多い薬を、以下に大きく4つに分けて説明します。

1)抗うつ薬
 抗うつ薬は主にうつ病の方に使い、気分の落ち込みや気力の低下を治療するために使用する薬剤です。(選択的再取り込み阻害剤)やSNRI(・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)は数年前からとなった薬で、以前からの抗うつ薬に比べて副作用が少ないため、現在、うつ病やパニック障害の治療に広く使われています。いずれの薬も効果を認めるまでに数週間かかるので、医師の指示に従ってきちんと用量を守って飲むことが大切です。

[1]SSRI(選択的再取り込み阻害剤)
 のひとつであるの神経末端への再取り込みを抑えることにより、抗うつ作用を発揮します。不安な気持ちを抑える作用が強く、うつ病だけではなくパニック障害や社会不安障害、強迫性障害の治療にもよく使用されます。や眠気の副作用が時々ありますが、内服を続けるうちに改善するケースが多いです。安全性の高い薬ですが、急に服用量を変えるとと呼ばれる強い反応(発熱・動悸・など)を起こすことがあるので、増量時だけではなく減量時にも注意が必要です。

〔処方例〕
 ・うつ病・パニック障害に対し
 パキシル(10mg)  1回3~4錠1日1回(夕食後)
 デプロメール(25mg)  1回2錠1日2回(朝夕食後)
 ・社会不安障害に対し
 ルボックス(25mg)  1回2錠1日2回(朝夕食後)
 ・強迫性障害に対し
 パキシル(10mg)  1回4~5錠1日1回(夕食後)
 (いずれも少量より時間をかけて増量する)

[2]SNRI(・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)
 と異なり、だけではなくノルアドレナリンの再取り込みも阻害します。神経末端でノルアドレナリンの濃度を上昇させるため、やる気を出す作用が強いのが特徴です。副作用についてはとほぼ同様ですが、眠気をきたすことはほとんどありません。

〔処方例〕
 ・うつ病に対し
 トレドミン(25mg)  1回2錠1日2回(朝夕食後)(高齢者は最大1日60mgまで)

[3]その他の抗うつ薬
 最近はかSNRIが第1選択薬として処方されることが多いですが、それ以外にも以前から用いられてきた多くの抗うつ薬があります。やSNRIが効かないときに用いたり、一緒に併用することもあります。上記の抗うつ薬と比較するとやや副作用の発現頻度が高く、主なものとしては、口渇・排尿障害・動悸・食欲亢進・眠気などがあります。うつ病では食欲低下や不眠を認める方が多いため、あえて副作用を治療的に利用することもあります。

〔処方例〕
 アモキサン(25mg)  1回2~3錠1日2回(朝夕食後)
 ドグマチール(50mg)  1回1錠1日3回(毎食後)(うつ病の食欲不振に対して) 
 デジレル(25mg)  1回1~2錠1日1回(前)(不眠に対して)


2)抗躁病薬、気分調整薬
 躁状態(うつ病の反対で、気分が病的に高揚してしまう状態)の患者さんや、気分の浮き沈みの激しい患者さんに使用して、気分の変動を落ち着かせるために用いる薬です。躁うつ病の患者さんには抗うつ薬と一緒に使うこともあります。抗うつ薬と比較し副作用の出やすい傾向があり、高用量で使用する場合は定期的な血中濃度の測定が必要です。

〔処方例〕
 リーマス(200mg)  1回1錠1日2回(朝夕食後)
 デパケンR(200mg)  1回1錠1日2回(朝夕食後)


3)抗不安薬、安定剤、睡眠薬
 気分を落ち着かせる作用の強い薬で、マイナートランキライザーとも呼ばれます。抗不安作用やに応じて抗不安薬、安定剤、睡眠薬などと名前が変わりますが、ほとんどがベンゾジアゼピン系と呼ばれるもので、基本的には同じ種類の薬剤です。他の薬に比べて即効性があり、不安や不眠を認める多くの疾患で高頻度に処方されます。適切に使用すれば安全性の高い薬ですが、依存性が強くなかなかやめられなくなるのが欠点です。また眠気やふらつきの副作用があり、服用中は車の運転や飲酒などを避けていただく必要があります。

[1]抗不安薬、安定剤
 睡眠作用よりも抗不安作用が強く、不安症状の改善を目的に使用する薬です。筋弛緩(きんしかん)作用もあり、肩こりや頭痛に対して処方することもあります。

〔処方例〕
 デパス(0.5mg)  1回1錠1日3回(毎食後)
 ソラナックス(0.4mg)  1回1~2錠1日3回(毎食後)
 メイラックス(1mg)  1回1~2錠1日1回(前)

[2]睡眠薬
 睡眠作用の強い薬で、主に前に内服します。睡眠障害のパターン(寝つきが悪いのか、夜中に起きてしまうのか、など)によって、効果時間の違う薬を使い分けます。

〔処方例〕
 マイスリー(5mg)  1回1~2錠1日1回(前)
 ベンザリン(5mg)  1回1~2錠1日1回(前)
 サイレース(1mg)  1回1錠1日1回(前)


4)抗精神病薬
 幻覚や妄想を抑える作用が強い薬で、主に統合失調症の治療に用いられます。抗不安薬と対比してメジャートランキライザーとも呼ばれます。抗不安作用や睡眠改善作用も強く、症状の強いうつ病や不眠症の患者さんに使用することもあります。副作用としては口渇・排尿障害・食欲亢進・薬剤性パーキンソニズム(薬によるパーキンソン病様症状)などを高頻度に認めるため、服用量が多い場合はあらかじめ副作用止めの薬もあわせて内服することが多いです。また極めて頻度は低いものの、と呼ばれる発熱、嚥下(えんげ)困難、筋強剛(きんきょうごう)、発汗などを特徴とする重症の副作用をきたすことがあり、このような症状が出現した場合は早急な治療が必要です。

〔処方例〕
 セレネース(0.75mg)  1回2錠1日2回(朝夕食後)
 リスパダール(1mg)  1回1錠1日2回(朝夕食後) (石澤哲郎)

※文中にあるオレンジ色の文字にカーソルを合わせてクリックすると、用語の説明が表示されます。

(執筆者:久保木富房石澤哲郎

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出典:「家庭のドクター 標準治療 最新版」(発行:日本医療企画 - 総監修:寺下医学事務所)/ 執筆者一覧


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