概説
、脳幹や大脳皮質の運動ニューロンのみが選択的に障害される病気を運動ニューロン病と総称しています。この中で最も多いのが
性側索硬化症(ALS)です。有病率は10万人に5人程度で、難病に指定されています。女性よりやや男性に多く、中年以降に発症します。遺伝を示すことはほとんどありません。残念ながらまだ病気の正確な原因はわかっていませんが、
を改善する薬も開発されています。
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症状
片側の手指の細かな運動の障害が初発症状となることが多く、その後、手の筋力低下や
が認められるようになります。手の
は母指球(親指の付け根の筋肉でもりあがったように見える部分)や小指球(小指の付け根の筋肉)にはじまることが多く、上腕筋や肩関節周囲の筋肉の
は遅れて出現します。手の甲の骨間筋の
も初期に生じ、あたかも骸骨(がいこつ)の手のような印象をあたえます。
とともに線維束性
(筋肉がピクピクと自然に
する現象)が出現するようになります。数週あるいは数カ月後に反対側の上肢(手)にも同様の症状が現れます。その後、筋力低下や
は下肢(足)にも広がります。脳神経領域も障害され、言語障害や嚥下(えんげ)困難も出現します。舌の
と線維束性
は特徴的です。さらには呼吸筋も障害され、呼吸困難のため人工呼吸器が必要となります。
や線維束性
は、
前角や脳幹の運動ニューロンが障害されたために生じます。ALSではこの他、
(すいたいろ)と呼ばれる大脳皮質の運動ニューロンから
や脳幹の運動ニューロンに命令を伝達する神経路も障害されます。このため
が亢進(こうしん)し、
という異常反射が出現します。
ALSでは運動系のみ選択的に障害され、知覚障害はまったく出現しません。これが診断上非常に重要になります。知覚障害を認めれば、ALSの診断はつけられません。ALSでは直腸や膀胱の機能がよく保たれる点も特徴的です。また眼球運動を支配する外眼筋も障害されにくく、
(じょくそう)の発生がまれであるといった特徴もあります。
以上が典型的な発症様式です。しかしALSの発症には様々な例外があります。下肢から症状がはじまる例や、手より先に
(たいかん)に近い筋肉が
することもあります。横隔膜の筋力低下により、早期に呼吸不全を呈する症例も存在します。また片側の手足のみの障害で片麻痺(かたまひ)類似の症状が認められた例も報告されています。なお線維束性
は正常の筋肉にもしばしば認められます。線維束性
のみがALSの初発症状となることは決してありません。
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診断
ALSと診断する上で、上位運動ニューロンの障害を示す
(すいたいろ)徴候(
の亢進や
など異常反射の出現)と下位運動ニューロン障害により生じる
、筋力低下、線維束性
などが認められることが必要です。さらに症状が進行することが確認されなければなりません。他覚的な
、眼球運動障害、膀胱直腸障害、小脳症状、
症(痴呆)などが存在すれば、ALSとは診断できません。ALSはまだ真に有効な治療がないため、次のような治療可能な疾患を除外することがとくに必要です。変形性頸椎症、頸椎後縦靭帯骨化症、腰部脊柱管
(きょうさく)症などの脊柱疾患は、レントゲン撮影や
により除外可能です。多発ニューロパチーや
筋炎も鑑別の対象になりますが、いずれも特有の徴候から除外は容易です。また脳幹や
の腫瘍も問題となることがありますが、
により診断できます。
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(執筆者:碁盤芳久)